遠刈田温泉街から少し離れた地に現れたのは京風の宿。落ち着いた趣のある木造の建物が通りを挟んで並ぶ。日帰り温泉のまほろばの湯と食事処くぬぎ庵、炭火焼肉まほろば、宿の本館と別館と別邸があり、小さな町の雰囲気だ。ゆっくり滞在したいのは別邸。京の小路の風情が漂う中、離れの部屋が佇む。10畳の和室は、違い棚のような造作の天井によしずが貼ってあり、床柱に桜の木を使うなど凝った造りだ。床の間そばには炉を切り、茶釜もある。 

心得のある人は茶の湯を楽しむのもよさそうだ。そして縁先には大きな蔵王石をくり抜いた源泉かけ流しの露天風呂。夜に満点の星を見上げながらとっぷりと湯につかれば、至福の時になる。本館には、10畳の２間続きの和室と板間の休憩スペースがある広い部屋もあり、８人まで利用できる。露天風呂はデッキスペースも広く、ゆったりと過ごせる。宿泊と食事を別料金にできるので、食事の時刻や外出など自分のペースで動けるのがいいところだ。 

料理は、割烹会席のうなぎ三昧がおすすめ。総料理長の津野利信さんは、うなぎ・川魚料理を得意としてこの道50年の大ベテラン。ウナギ料理は、串打ち３年、裂き８年、焼き一生といわれ、長い修行が必要な技術だ。愛知県三河一色産の８ヵ月のうなぎを仕入れて生からさばき、秘伝のタレをからめて絶品の蒲焼きに仕上げる。その他、きも吸い、うな茶漬けなども。会席料理には他に魚介のお造り、天ぷらなども揃い、満足感はこの上ない。蔵王を望む自然あふれる地で、京風の別世界にひたってみたい宿である。