フードバンクの安定した運営
平成27年(農水省・環境省)の推計によれば、日本の食品廃棄物は年間2,842万トンに及ぶという。そのうち、本来食べられるのに捨てられる食品が646万トンで、その量は国連世界食糧計画(WFP)による食糧援助量(約320万トン)の2倍以上にあたります。さらに驚くべきことは、この半分弱に当たる289万トンは、一般家庭から排出されという。この数値は、年間1人当たりに直すと51㎏{年間1当たりの米の消費量(54㎏)}に相当します。こうした状況を反映する形で、ごみの処理事業経費は、年何約2兆円に及んでいます(環境省)。一方、食費は家計における食費支出の中で25.7%{消費支出:242,425円(平成28年総務省「家計調査」}を占めていますが、子供の貧困率は13.9%で、7人に1人(厚生労働省「平成28年国民生活基礎調査」)の子供が、毎日のようにひもじい思いをしながら生きていることになります。なお、こうした現状は、子供がいる現役世代(大人が一人:50.8%)、同、大人が二人以上:10.7%、子供がいる現役世帯平均:12.9%となっています。このような状況を放置して、ボランティアに等しい「フードバンク」にまかせておいてよいのでしょうか。
また、別の角度から見ると、日本は、諸外国に比べ食糧自給率は低く、カロリーベースでは38%(平成28年)、生産額ベースでは68%(平成28年)です。ちなみに、カナダ、オーストラリアなどは、カロリーベース、生産額ベース共に100%を上回っています。確かに中長期的には、食糧自給率を高めることは必要でしょうが、新型コロナウイルス感染拡大で経済活動が落ち込んでいる中、生活困窮世帯に食品を提供するフードバンク活動は頼みの綱です。しかし、この活動の基盤は弱く、企業や個人からまだ食べられるのに捨てられる食品の寄贈を受け、困窮世帯に提供する仕組みで、NPO法人が手掛けていることが多い。コロナによる混乱で収入が減少したり失業したりしたことでフードバンクによる支援を望む人が増えているという。近年、こうした活動の社会的認知度が高まり、企業が食品の提供に動きやすくなったことは喜ばしいことです。もちろん、サポートに動き始めた自治体もあるなど、徐々に支援の輪は広がりつつあるようです。
しかし、憲法に謳われてる基本的人権とは、「全ての国民は健康で文化的な最低生活を営む権利がある」というのが基本中の基本ではないかと思います。特に、自分の力で経済活動ができない子供たちが、生きるために必要な食事も満足に取れないという現状は、明らかに異常ではないでしょうか。そうした観点から考えると、フードバンクなどという仕組みは、民間、自治体、国が一体となって取り組むべき最重要課題だと考えます。人の悩みはそれぞれですから、だれの悩みが一番重いかを測ることはできません。ましてや、コロナウイルスの蔓延によって、景気が落ち込んでいる現在、フードバンクの充実は優先順位が低いと考える人も多いかもしれません。しかし、その一方で、上記のようにまだ食べられるものを廃棄し、そのために多額の費用をかけているとう現状を少し改善するだけでも、多くの子供たちを救うことができます。その子供たちが成長し、その時の感謝を込めて、社会的責任を果たすようになれば、経済活動を含めた社会活動が正常に回り始めることは間違いありません。ボクたち動物もそうした社会の実現を願っています。