多賀神社
仙台市太白区に鎮座するのは仙台で最も古い神社である多賀神社。この神社の歴史は西暦110年、第12代景行天皇の御代まで遡ります。しかも創建したのが、全国白鳥神社や横須賀の走水神社、名古屋の熱田神宮などでも祀られている有名なヤマトタケルだというから驚きです。神様が神様を祀ったというのですから、日本の神社は面白い! 彼が父である景行天皇の命令で東夷追討に訪れた際に、現在の滋賀県に鎮座する多賀大社から勧請したものです。すると、相次ぐ戦いと長旅で重い病気を患っていた体がみるみる回復したことから、今なお「病気平癒」の御伸徳を備えているといわれている。このようにヤマトタケルからも頼られた神様が、多賀神社の御祀神イザナギノミコトですが「あれ?...」と思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そう、先にご紹介した愛宕神社の神様カグツチの父であり、怒りのあまり我が子を殺してしまった神様です。そんなことして本当に神様?...と思われるかもしれませんが、このように不完全なのが日本の神様の強みでもある。なぜなら完全無欠の唯一神には絶対にできないことがあるから。それが「成長すること」です。古事記の中でも特にイザナギは失敗ばかり。てすが、多くの失敗を乗り越えて成長したからこそ、人間の失敗を寛大に許し、成長を促してくれる。そして彼自身も多くの失敗の末に、最後は川で禊ぎを行い大きな成長を遂げ、伊勢神宮のアマテラスオオカミや八坂神社のスサノオノミコトという偉大な神様を生み出した父神になったのです。
多賀神社境内の由緒書にも「伊勢に参らばお多賀に参れ。お伊勢お多賀の子じゃ孫じゃ」という流行り歌が記されていることからもわかります。しかもこの神様は病気平穏だけでなく、この地域を守る守護神として領主や武家からも篤く信仰されたという側面も。これは清水八幡宮で元服したことで「八幡太郎」との異名を持つ源義家が鎮守府将軍として東征に訪れた際この地へ参拝して武運長久を祈り、自筆の物を奉じたことからもわかります。義家はその後、後三年の役を鎮定。東国における源氏勢力の基盤をつくることになりました。もちろん仙台藩の代々藩主からも篤く崇敬された神社です。そんな歴史上の偉人からも崇敬された神社で、一年の健康と幸せを祈ってください。