オヤジのさえない顔色
今朝のめざましテレビ「今日のワンコ」は、盲導犬がご奉公を終えて元の家に戻って穏やかに暮らしているというお話でした。こうした風景は何度も見たことがあり、いつも大盛り上がりなのですが、ちょっと気がかりなことがあります。それは、オヤジが心から喜んでいるように見えないのです。もちろん、ワンちゃんが立派に仕事を終え、悠々自適の暮らしをしていることは嬉しいに決まっていますが、7年間も連れ添った相棒と別れる時の気持ちをボクたちと重ねると複雑な気持ちになるのかもしれません。余計なお世話であることは重々承知しているはずなのですが。
盲導犬が一人前になるためには、まず、生後2ヵ月は母犬や兄弟と過ごし、その後10ヵ月パピーウォーカーというボランティアの家で過ごした後、盲導犬協会に戻って厳しい訓練を受けるという。その後、相性テストを受けて新しいご主人の下で働き始める。そこで7年間もずっとご主人に寄り添い奉公をし続ける。今日のワンちゃん「白ラブ」も立派に仕事を終え、ようやく古巣に戻って甘えている姿が印象的でした。その穏やかで幸せな日常を喜んであげればよいものを、まだまだ働けると思っているワンちゃんと、ずっとそばに置いておきたいご主人は、その思いをどのようにして吹っ切ったのだろうか?
ボクが考えるには、オヤジの心境はたぶんこうです。それは、ボクが警察犬訓練所に入ったとき、たった2ヵ月間だったのに、お互いあんなに悲しかったのだから、7年も一緒にいて、別れるのが悲しくないはずはないと思っているに違いありません。あのときは確かにボクも悲しくて泣きわめきました。その声を振り切ってボクを預けて帰るオヤジとお母ちゃんもどんなに苦しかったことか。しかし、あのときとは少し事情が違います。ボクはあのとき、この訓練はあまり意味がないことを知っていたからです。ボクたちは、事前に事情さえしっかり説明してもらえれば、受け入れる準備は常にできているのです。