塩釜市 杉村淳美術館
塩竈市本町の小高い丘にたつ「塩竈市 杉村淳美術館。ガラス扉を開けて館内に入ると、何とも言えない懐かしい空気が流れています。この建物が塩竈市公民館本町分室として建てられたのは、1950年(昭和25年)です。改装を経て2014年、公民館の機能を併せもつ美術館として開館しました。以来、さまざまな人々が交流しながら、文化を発信する拠点として今日を迎えています。
長い歳月を重ねて磨きこまれた階段を上った先には、塩竈市ゆかりの洋画家杉村淳画伯の常展示室とレンタルスペースになっている市民ギャラリーがあります。東京空襲で自宅も描きためた作品も失った杉村画伯は、塩竈に移り住み、描画の対象としての魚に出会う。「魚市場で新鮮な魚を次々に買い替えては描いていたそうです」と説明してくれるのは、学芸員の阿部沙斗加さん。
たしかに、「鱈」など飛び跳ねそうな生命の躍動にあふれた作品ばかりです。黒を基調とした油絵の創作は、94歳の誕生日直前まで続き、最後の作品も展示されています。深く趣のある作品は、建物の雰囲気とも呼応しているかのようです。リノベーションして3年になるギャラリーは、真っ白な壁と木の床とのコントラストが美しい。旅行で訪れて気に入り、個展を開きたいと申し出た人もいたという。