都屋本店(白石市沢目)
鰻の老舗の品書きに「かつ丼」。代々受け継ぐ鰻ダレをかけ、卵でとじないかつ丼は「都屋本店」の人気メニューのひとつだ。食糧難だった戦後、家族だけでなく、近くの住人や労働者に振舞った。ご飯にタレをかけただけの「たれまんま」がその原点になっている。天かす入りになり、カツや天ぷらが載せられて...と食が豊かになるにつれて、たれまんまは徐々に豪華に。
地域の定番の味となった鰻ダレの「カツ丼」や「天丼」が品書きに並ぶようになった。特性の醤油と砂糖、鰻の頭と骨でとったスープなどを合わせて煮立てる。一旦寝かせた後、代々受け継ぐタレに継ぎ足し、香ばしく焼いた鰻をくぐらせることを繰り返して深い味わいを保ってきた。「同じように調味料を合わせても舌が感じる味は変化することがあります。できるだけ尖らせないよう、調味料を加減します」。
五代目の針生貞夫さんはタレの味を確認するとき、カツ丼にかけて確かめる。幼いころから馴染んだ味を体が記憶し、秘伝の味をつなぐ。細目のパン粉でしゃりっとしたカツとふっくら炊き上がった白飯に鰻ダレをかける。追いダレの希望にも応じてくれるので、贅沢にかけてみるのもいい。鰻ダレの染みた香ばしいカツと「たれまんま」のハーモニー、鰻やならではの味を堪能したい。