仙加苑(3)(白石市)
徳蔵の加藤屋で、まんじゅうを商っていたかどうかは定かではない。「私は祖父を知らないが、母親が作るまんじゅうがとても美味しかった」。圭一さんが物心ついた頃、父で七代・守弥氏が事業に失敗し、母・きよ子さんが細々とまんじゅう屋を続けていた。「当時は醤油ではなく、"たまり"でした」。自家製味噌からしみでる味噌たまりを生地に入れたといい、小学生の時から手伝わされていた。時代は下り、圭一さんが就職先の東京から、両親の体調を案じ小原に戻ったのが1971年(昭和46年)。
まんじゅうを醤油だれで作ってみると評判がよく、小原温泉の旅館などにも卸すようになる。「萬蔵稲荷の奥、峠の茶屋においてもらって、人気に火がついた」。妻の三枝子と二人三脚で頑張り、その後白石市中心街に進出。さらに1999年に現在の店を構え、社名を「仙台藩に加藤屋あり」との意味を込めて仙加苑とした。圭一さんは今も時々工場に入り、社長と共にお菓子の品質向上を追求する。
「販売中の商品も、より美味しくなるようにと手を加えます」。「私の特技は、他社製品でも食べると素材が分かること。でも真似は絶対にしません」。ヒントをもとに、もっと上のオリジナルに高めるのだという。八代目の超絶な味覚、九代目も徹底する独創性、そして親子で真摯に仕事に向き合う姿。いかにも伊達家御用商人の末裔だ。小坂峠にある萬蔵稲荷神社は今も親交を集め、峠の茶屋付近からの眺めも最高という。老舗のゆかしい歴史は、ふと旅心までも運んでくる。