仙加苑(1)(白石市)
白石市に本店と工場を置き、手作りの多彩なお菓子が人気の仙加苑。そのルーツは、伊達家御用菓子職人だった。「伊達家が福島県の梁川城に入る時、先祖を御用職人として京都から一緒に来たのです」とは、九代目となる加藤泰三社長。梁川時代の制作とされる、美しい掛け軸を指差しながら「加藤屋の暖簾が見えますよ」。よく見ると「京御菓子所」の看板が掲げられ、店先には菓子が並んでいる。創業が1836年(天保7年)と伝えられるものの、当時の資料は、預け先の本覚寺が火災に遭い、史実は不明という。
さて、看板商品の足軽まんじゅうを紹介しよう。「一見すると、普通の茶色い蒸しまんじゅう。ところが一口ほおばると、やわらかい生地の香ばしい塩味に驚く。そして、ほどよい甘さの小豆餡と口の中で親和するのだ。絶妙な甘塩っぱさが、病みつきになりそう。「黒糖と間違えられることもあるけど、秘伝の醤油だれ一本で勝負してきました。よそと違うことをしようという家系です(笑)」。目の前に現れた熟成醤油だれは、なんとも美しく輝いている。「この黄金のような照り、透明度と香り。風味ものっているはず」。
たれの製法は企業秘密で、社長と先代、親族も一人だけが知るという、まさに一子相伝の技だ。社長曰く「厳選した材料だけを使い、決められた仕事を真面目にやり通すだけ」。北海道富良野産小豆で作る餡、地元製粉会社の小麦で作る生地、蒸の作業。「どの工程も、多くの手間をかけています。食べる方の笑顔のためには変えられません」と明言する。「苺がんづき」や「りんごマドレーヌ」といったオリジナル菓子も、既成のジャムを使わず、新鮮な果物から手作りするそうだ。話に出た、他とは違う"独創性"も改めて注目したい。