加賀の屋の「金沢おでん」
冬の風情もまた格別な定禅寺通りと国分町通りの角に立つ、ビルの4階に「加賀の屋」があります。この店で提供されるのは、「金沢おでん」です。店長の渡部学さんによると、金沢おでんとは「日本海の海の幸、金沢(加賀)の名物が入ったおでんだそうです。初めてでもすぐに馴染めそうな雰囲気が嬉しい。さて、その日本海の幸として筆頭にあげられるのが「カニ面」というおでんタネで、香箱ガニと呼ばれるメスのズワイガニを使う。香箱ガニは、粒々の卵"外子"と味噌の部分"内子"を持ち、オスに比べて小ぶりだが、味は濃厚。その身をていねいにほぐして、甲羅にきれいに詰めたものがカニ面というわけです。
蒸して京風の出し汁にくぐらせていただくという、贅沢な一品です。金沢でおでんに欠かせないものの一つが白山堅豆腐(はくさんかたとうふ)という北陸伝統の豆腐。石川県白山の伏流水と天然にがり100%で作られた、普通の木綿豆腐よりもはるかに堅く味も濃い。他にも、加賀レンコンをはじめ、雪の多い金沢ならではのあまくてほくほくの野菜、練り物も加賀揚げと、仙台では見られないタネばかりで、直接金沢から取り寄せているとのことです。金沢おでん以外でも、鴨の治部煮に代表される加賀料理がお品書きにずらりと並んでいます。渡部店長いわく「京料理を庶民的にした感じ」が、加賀料理だと。
オープン2年目を迎えて、日本海の幸に加え、三陸の旬の素材を料理にしたものも加わった。メニューには載せきれないが、時間さえあれば、お客さんの「こんなものが食べたい、あれはつくれないのか」のリクエストに応じる料理屋さんでもある。そのオーダーに応じるのは20代の若き料理長。「料理を作るのが楽しくてしょうがない」というから、美味しいわけです。お客さんの7ないし8割がリピーター。仙台ではなかなか味わえない北陸の幸、そして手間ひまかけた味わいに惹かれて、2度目以降は家族を伴って訪れるお客さんも多いという。カウター席、テーブル席、個室も揃っています。「フランクに来ていただける店でありたいですね」と店長。北陸の美味を味わいにぶらりと出かけてみたい店です。