わきが甘いと言わざるを得ない問題なのか?
わきが甘いとは相撲を取るときの防御姿勢が不十分であることをいうものですが、危機管理だけでなく、準備不足や不用意な言動などについてよく用いられる、大変便利な形容詞です。相撲におけるもともとの意味は、左右の腕と躯体の間の隙間のことで、相手の差し手を封じ込め、有利な体制にさせないようにする態勢に問題があることです。つまり、平たく言えば、戦う相手や交渉相手につけ入る隙を簡単に与えてしまうことを「わきが甘い」と表現するわけです。そうすると、いま物議をかもしている総理秘書官の総理公邸での忘年会開催がこれに当たるのか、それとも、そこで記念撮影をしたことがわきの甘さなのか、はたまた、写真が世間に出回ったことが問題なのか判断が難しい。もし忘年会開催が問題だというのなら、法的根拠に基づいて判断すべきだろうし、そこで写真撮影をしたことがどんな規定(禁止事項)に違反するのか、その根拠を示すべきだろう。そして、内々で撮影された写真が世に出回ったことが望ましくない行動であるとするならば、内部的な危機管理体制が問われるべきだともいえそうです。
国の秩序に関する問題だけに、確かに重要な問題であることは確かですが、現在の世界情勢にかんがみれば、いつまでも議論を続けていいはずがない。他の国からみると、「ほかに解決すべき問題はないのか?」と不信感を持たれることが心配です。見ようによっては今の状態そのものが「わきの甘さ」を露呈しているように見える。平和な国のチワげんかはいい加減にして、国の進むべき道筋を明確に示し、リーダーシップを示してもらいたい。とかく日本人は、上にいただくものがないと安心して行動できないという特性があるので、文句が多い割には、リーダーがしっかりしていないと落ち着かないのです。もっともそうした「消極的善人」から脱皮して、自分の意見をはっき言う人間にならなければならないのだが、そうした人々を育て上げるためにも、小異を捨てて大同につくリーダーシップが求められているのではないでしょうか。今の時代、水戸黄門のような大御所が印籠をかざして登場するような場面は見られそうもないので、選ばれて一旦リーダーになったからには、腹をくくって、進む勇気を持ってほしいものです。
そうしたリーダーには使えそうな相撲の技は、わきの甘さを治すだけでなく、ほかにもたくさんあります。「押し出し」「うっちゃり」「肩すかし」「はたき込み」「呼び戻し」「つり出し」「一本背負い」「かちあげ」「張り手」など実に多彩なものがあります。何しろ相撲は国技でもありますから、国民性にも馴染むはずです。こうした技を織り交ぜて柔軟に繰り出すことで、国民の思いに近づくことができるのではないでしょうか。細やかな気遣いは、企業においても政治においても必要なことだと思います。しかし、限られた資源を効果的かつ効率的に運用し、最大の効果を上げようとすれば、何らかの摩擦が生じるのは避けられないでしょう。だからと言って、目まぐるしく変化する環境に適応した最適な施策を打ち出すことは至難な技です。目指すべき将来の姿を描いてみせ、現状を踏まえたうえで、そこに至る道筋(戦略)を示すことで国民の担うべき責任を意識させれば、その努力目標に向かって歩き出すぐらいの意識の高さは誰にも備わっているはずです。要は自分や家族の行く末に責任の持てる覚悟を決めたいのではないでしょうか。