飽くなき戦い(2)
サンクコスト効果について、もう少し紹介しましょう。〇〇円以上購入での特典:もうすぐ〇〇円だから、余計なものを購入しても特典を得たい、という心理(払った金額+特典というサンクコスト)。会員のランク付けけ:顧客の購入金額の多寡や会員期間の長さによってランク付けが変わる場合、その地位を確保したい、という心理(購入金額や時間といういったサンクコスト)。付録付き月刊誌:特に数ヵ月以上にわたって付録が付く月刊誌の場合、付録をコンプリートしたい、という心理(ここまで買い続けたのだから完成させないもったいないというサンクコスト)。次は、本日限りの特価・通常価格から〇〇%OFF「アンカーコスト効果」です。これは、力強い「本日限りの特価!」「通常価格から〇〇%OFF!!」というキャッチコピーで、行動科学における「アンカリング効果(認知バイアスの一種で、情報量が限られている状況下において、先に与えられた数字や情報を基に検討を始めることにより、その後の意思決定に影響を及ぼす傾向のこと。つまり、アンカリング効果とは、はじめに提示された情報が強い印象としてインプットされ、その後の意思決定に影響を与える効果)」を狙ったものです。
本日限りの特価!であれば、安いのは今日「だけ」。通常価格から〇〇%OFF!!という場合は「〇〇%OFF!!」という情報が強烈なインパクトとして、この文言に触れた人に刻まれ、購入の後押しになります。ちなみにここでの「〇〇%OFF!!」は、具体的にいくらお得になるかではなく「安くなっている」という印象を与えるためのメッセージです。このような商品のキャッチコピー以外にも、アンカリング効果は営業マンが有利に話を進めるためにも利用されます。ファーストコンタクト時に自分の強み、例えばそのジャンルについての造形が深いことを印象づけたり、見積書提出日に「特別値引き」として、相手にお得感を持ってもらうといった方法も、アンカリング効果を得られます。繰り返しになりますが、値引き価格での販売実績がないと景品表示法に抵触するので、関連法規に注意する必要があります。次は、販売累計〇〇万突破・業界シェア率ナンバーワン「バンドワゴン効果」です。販売数の多さを感じさせる「販売累計〇〇万突破!」「業界シェア率ナンバーワン!」といった文言ですが、これらは行動経済学の「バンドワゴン効果」を利用したものです。
バンドワゴン効果とは、その商品を持っていたり、使っている人数が多い程その商品を欲しがる人が増える現象を指します。人気商品ほど「あの人が持っているから私も欲しい」や「これを持っていないと流行おくれになってしまう」という心理が働き、人がさらに人を呼ぶ流れを呼びます。バンドワゴン効果は、数字の多さを強調するだけにとどまらず「今もっとも売れています1」「残りわずか」といった、人気を表す言葉を用いたり、店舗であれば陳列棚の一部をあえて明けでおき、この商品は売れている=人気があるという雰囲気づくりも有効です。そのほかにも、テレビ番組で紹介されました、〇〇賞受賞!といった社会的評価を得られることを全面に出すのもバンドワゴン効果につながります。この評価を購入の判断軸にする人は少なくないはずです。このように、行動経済学を活用することによって、眠っていた購買意欲を覚醒させる効果が期待されることは確かですが、その結果が、消費者の生活を豊かにしたかどうかは大いに疑わしい。中には真実に基づかない偽情報や誇大広告、脅迫なども散見されます。