その時オヤジは何を感じたのか
以前にもたびたび登場した、「おおい栗之助」(河北新報連載の4コマ漫画:森栗丸作)に登場する栗之助君(ワンちゃん)一家は、早くにお母さんをなくした栗太郎君とお父さんの3人暮らしです。家計は貧しく、お父さんが傘はりの仕事をしながら細々と暮らしています。そんな境遇にもめげず、利発でけなげに生きる少年、栗太郎君に寄り添い精神的支えになっているのが、栗之助君でした。現在は、「ねえ ぴよちゃん:青沼貴子作」が笑いを誘っています。この一家は、主役の「ぴよちゃん」「お兄ちゃん」「お母さん」「お父さん」、それに「又吉君(ネコちゃん)という賑やかな家庭です。又吉君は、ぴよちゃんのサポーターで、何かにつけてぴよちゃんをフォローし、読者にほのぼのとした温かみを届けてくれています。
栗之助君は、ボクと同じのワンちゃんなので、心の中の葛藤やつぶやきはオヤジの心にはストレートに伝わるようですが、又吉君の奔放さには驚きを隠せないようです。これは、ぴよちゃんのあっけらかんとした明るい性格にもよるのでしょうが、とにかく面白いキャラクターで、みんなを和ませてくれます。そのためか、この家では、お兄ちゃんとお父さんはあまり存在感がありません。ところが、先日、そのお父さんが大ヒットを飛ばしました。その顛末はこうです。ソファーの上でまどろむお母さん、そのうえでちゃっかり寝ている又吉くん。そこに、外から戻ってきたお父さんが、「お母さん!この辺においてあっ書類を知らないか?」と尋ねました。すると、驚いたお母さん。「あら何時かしら? 夕飯の支度しなくては!」と大慌て。
するとお父さん。「まだ朝だよ! さっき出て行ったばかりだが書類を忘れていたことに気づき戻ってきたんだ」。続けて、「お前、俺が出ていくと10分でもう寝るのか?」。この一言にはさすがのお母さんもタジダシでした。そして又吉君も何も言えず、ただ寝ぼけ眼をこすっているだけでした。相棒のオヤジは、これを見てニヤリと笑いました。それは、「普段は影が薄くても、やるときはやるんだ!」という雄叫びのようにも見えましたが、これは使えると心にインプットしたのか、それとも、ただ茫然としている又吉君の姿を見て、ムサシ(ボクのこと)なら、「お母ちゃんは、朝早くに起きて、洗濯やみんなの弁当作りで疲れているので、ついうとうとと」などと、弁護してくれるかもしれない、と思ったのか。でも、その「ニヤリのわけ」は敢えて聞かないことにしました。