東一市場「思い出の味」
かつて「東一番町通」と呼ばれた一番町通。仙台大空襲によって全焼したが、復興により現在の道幅15mの大通りへと拡張。それに伴い、人とモノの多くが集まるこの通りに付帯する形で「東一市場」が生まれ、そしてよく翌年(昭和33年)、東一市場の西側エリアが鉄筋コンクリートのビルに改築されました。仙台市民の台所として鮮魚店に精肉店、裁縫店、洋品店に薬屋など様々な店が立ち並ぶ商店街だったが、時代の趨勢と共に飲食店が増えていき、特に東一連鎖街と東一市場東側エリアは飲み屋街として発展していく。東一連鎖街は大規模開発により平成20年にその姿を消したが、東一市場は今なお健在です。近隣の森徳横丁とも緩やかに繋がりながら、どこかに猥雑な空気をはらみながら、今日も酔客たちにその懐を開いている。
東一市場の東と西を結ぶ角地に三塚晴紀さんが『と文字』を開店したのは、平成26年の11月だった。「古き良き飲み屋街。そんな匂いが残っているところに惹かれて、このまちの一部になってみたい、と思ったんです。自分自身、若い時分から良く来ていたまちですし。すし屋での修業時代は、翌日の仕込みが終わるのが深夜2時、なんてこともしょっちゅうで、店を出た足で『味菜』さんの暖簾をくぐり、夜だか朝だかわからないご飯を食べていた。新鮮なお刺身はもちろん、煮魚に生姜焼き、お茶漬け、おにぎり。どれも家庭的な味付けで、とびきり安いのもありがたかった」。夜の8時から朝の6時まで、という営業時間の『味菜』は、知る人ぞ知る東一市場の名店。
開店から46年、たくさんの人の心と胃袋を満たし続けている。東一連鎖街から東一番町へ移り、その歴史を継いでいる『菊水』。カフェの先駆け『ミルズ』。すっぽんの『吉良久』等々。名店の名を挙げればきりがない、そんな密度の濃さが東一市場の特徴だ。「『と文字』を始めてからずっと、横丁のたくさんの人に世話になっています。『縁側』『みつくら』『クッチーナ・セグレタ・みつくら』『串酒場ときわ』をこのままにオープンできたのも、皆さんの後押しあってのこと。また、仙台駅東口にオープンした『EKITUZI』も、ここでのご縁と経験が根幹です。この春からは、東一市場界隈をもっと楽しくしていくプロジェクトも進行中です」。